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法律・実務情報

遺留分侵害額の算定方法

今日は遺留分侵害額請求における請求額の計算方法をご紹介します。
(自分のための備忘録でもあります。)

後ほど細かくみていきますがまずは全体の流れです。
ステップ1
まず、遺留分算定のための基礎財産額を求めます。

遺留分算定のための基礎財産額(1043条)
= 被相続人が相続開始の時において有した財産の価額
 + 贈与した財産の価額
 - 債務の全額

ステップ2
次に、請求する人の遺留分額を求めます。

遺留分額
= 遺留分算定の基礎財産額 (ステップ1で算出)
 × 遺留分割合(総体的遺留分割合×法定相続分)

ステップ3
最後に遺留分侵害額を求めます。

遺留分侵害額
= 遺留分額(ステップ2で算出)
 - 遺留分権利者が受けた遺贈や民法903条の特別受益として評価される贈与の価額
 - 相続によって取得すべき遺産の価額
 + 遺留分権利者が承継する債務の額

ステップ1
まず、遺留分算定のための基礎財産額を求めます。

遺留分算定のための基礎財産額(1043条)
 *財産評価の基準時は相続開始時


被相続人が相続開始の時において有した財産の価額

+ 贈与した財産の価額

 *財産評価の基準時は相続開始時
 *相続人以外の者に対する生前贈与は相続開始前1年以内が対象
 *相続人に対する生前贈与は相続開始前10年以内が対象
 *相続人に対する生前贈与は「特別受益」にあたる贈与である必要があり、それに当たらない贈与は含まない
 *相続人への贈与は持ち戻し免除の意思があっても算入する
 (*特定の相続人を生命保険金の受取人に指定したことが特別受益と評価される例外的場合には基礎財産に参入する余地がある)
 *1044条の内容
 相続開始前1年間の贈与。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したときは1年間に限らない。
ただし、相続人に対する贈与は1年を10年と読み替えるため、相続開始前10年間にしたものと期間は広がる。
一方で、単なる贈与は含まず、婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本としての贈与と贈与全般ではなくなる。

- 債務の全額
 *保証債務は原則として相続債務に含まれない

*遺言執行費用、相続財産管理費用は債務に含まれない
*相続税、葬儀費用も含まれない

ステップ2
次に、請求する人の遺留分額を求めます。

遺留分額

遺留分算定の基礎財産額 (ステップ1で算出)
× 遺留分割合(総体的遺留分割合×法定相続分)

*直系尊属以外であれば2分の1、直系尊属のみのときは3分の1、が総体的遺留分
*遺留分権利者複数のときは総体的遺留分に法定相続分を乗じたものが個別的遺留分となる

ステップ3
最後に遺留分侵害額を求めます。

遺留分侵害額

遺留分額 (ステップ2で算出)
- 遺留分権利者が受けた遺贈や民法903条の特別受益として評価される贈与の価額

*特定財産承継遺言により取得した財産も含む

- 相続によって取得すべき遺産の価額

*相続財産に具体的相続分を乗じた価額。
法定相続分ではなく、特別受益を考慮したあとの具体的相続分。
ただし、寄与分は家庭裁判所の審判で形成されるためここでは考慮しない。
*すでに遺産分割がなされているときはその遺産の額とすべきとの見解がある

+ 遺留分権利者が承継する債務の額

*相続債務×法定相続分が基本
*包括遺贈の場合は受贈者が相続債務を全部負担するので0

以上で計算は終わりです。
ややこしいですね。

実務では、贈与の有無や金額を当事者が把握していないかったり、
証明できなかったり、生計の資本としての贈与といえるかという部分で混迷を極めることもあり、
この計算式にあてはめるべき数字を得ることからして難しかったりします。